普通の美容室より1000円カットの方が儲かるのか調べてみた

街でよく見かける1000円カット。10分前後でカットだけして1000円という安さなのに、なぜ潰れずに続いているのか気になったので調べてみました。

普通の美容室と比べてどちらが儲かるのか、いくつかの記事や開業者向けの情報をもとにまとめます。

自分は現役の美容師で、以前1500円くらいの低単価の美容室で働いていた時期があります。1000円カットそのものではないですが、近い価格帯で働いた経験があるので、数字を見ながら当時のことを思い出しつつ書きました。

客単価だけ見ると美容室が圧倒的に高い

まず単純な金額だけ見ると、美容室の方が断然高いです。カットにカラーやパーマを組み合わせれば、1人あたりの客単価は美容室で4000円から1万円前後になると言われています。

1000円カットは基本的にカットのみで、客単価は税抜き1000円です。これだけ見ると、美容室の方が儲かっていそうに見えます。

ただ、ここで考えないといけないのは時間あたりの売上です。

美容室はカウンセリングからシャンプー、カット、カラー、トリートメント、ブローまで含めると1人に1時間から2時間半くらいかける店も多いです。

単価8000円の施術に2時間半かかったとすると、1時間あたりの売上は3200円程度になります。

一方の1000円カットは施術時間が10分から15分なので、1時間に4人から6人くらい対応できます。単価1000円でも1時間でまとめると4000円から6000円になり、時間効率では美容室を上回る計算になります。

美容室と1000円カットの売上違い

普通の美容室はカラーやパーマでお客さんに長く滞在してもらう分、施術できる人数に限界があります。

縮毛矯正やパーマなど、かかりっきりなる時間が長いので、人数をこなそうにも圧倒的に手が足りないのです。

原価がほとんどかからないという話

1000円カットの場合、使う材料はワックスやスプレーくらいで、シャンプーやカラー剤、パーマ液のような薬剤費がかかりません。

そのため原価は売上の1%程度に抑えられるという情報がありました。

逆に言うと売上の99%近くが粗利になる計算です。

特に水道代は顕著に違います。

美容室の場合はシャンプーやトリートメントの材料費が1人あたり100円から200円かかり、水道光熱費も含めると粗利は1000円カットよりも減ります。

普通の美容室の場合、カットをする人以外のアシスタントもいるので、人件費もかかる上で利益率を見ると、回転がきちんと続いている前提では1000円カットの方が高くなりやすいのです。

設備や店舗の作りも違っていて、1000円カットはシャンプー台や大きな洗面設備が要らないため、店舗を狭くできて家賃も抑えやすいという特徴があります。

1000円カットってかなり小さくまとまっているお店多いですよね?

受付スタッフを置かず券売機で会計を済ませる店も多く、人員もスタイリストだけで運営できることが多いのです。

参照元:J-Net21

ただし回転率がすべての前提になる

ここまでの数字は、お客さんが途切れずに来店してくれるという前提があってはじめて成り立ちます。

一般的なサロンの来店数は1日平均8人くらいなのに対して、1000円カットのQBハウスでは1日あたり30人程度のカットを行っているという情報がありました。施術時間も10〜15分が基本なので、その分のスピードと集客力が常に求められる計算になります。
参照元:モアリジョブ
私も低単価サロンで仕事をしていた時、とにかく切って切って切って…でした。

たくさん人数をこなす美容室

そのため1000円カット店は駅前やショッピングモールの中など、人通りの多い場所にしか出店できません。

視認性の良い立地は当然テナント料も高くなるので、家賃比率は美容室より高くなりやすいとも言われています。

空席が目立つ時間帯があると、すぐに採算が崩れてしまう薄氷の上のビジネスでもあるようです。

私が勤めていた内の1店舗は、駅近東京の一等地ということもありなんと一ヵ月家賃200万円。

家賃に驚く美容師

黒字ではありましたが、売り上げが少しでも傾き始めれば大変なことになってしまいます。

休憩時間以外は絶えず髪を切り続ける。

ぼーっとできる時間なんて全くない、ぐらいでないと続けるのが難しい業界であることは間違いありません。

働く側の給料事情

1000円カットで働くスタイリストの給料は、一般の美容室よりも2割から5割ほど高めに設定されている店が多いという話もありました。

理由としては、休憩を取りにくく延々とカットを繰り返す重労働であること、そして美容師免許を持つ人の中でカット専門店での勤務を希望する人が少なく、人手不足を給料で補っているという背景があるようです。

お店側からすると、原価が安くても人件費はそれなりにかかるということになります。
参照元:dansuru Inc.

私も一度QBハウスさんの面接を受けに行き、カットの試験も受けて合格をもらったのですが、打診された給料がそれまでの普通の美容室よりも若干高かったのを覚えています。

ただ、給料5割増しというのは少し盛りすぎかなと。

こうして給料を高めに設定してでも人を確保しないといけないのは、業界全体が人手不足に悩んでいることの裏返しでもあります。

市場全体としては理美容業界自体がほぼ横ばいで、大きく伸びているわけではないようです。

矢野経済研究所の調査では2024年度の理美容サロン市場規模は前年度比1.5%増の2兆1240億円だったと発表されていますが、これはコロナ禍からの回復や各サロンの料金改定が押し上げた分が大きいという分析でした。

1000円カットのような低価格チェーンの利用が進む一方で、業界全体として大きく成長しているわけではないとも言えます。

参照元:矢野経済研究所

働いている側が楽なのは

働いている美容師側に負担が少ないのは圧倒的に普通の美容室です。

1人あたりの単価が高い分、施術時間にも多少ゆとりが生まれます。

しかし1000円カットなどは分単位で急いで髪を切りまくる。それが丸1日続くのです。

ただ、余計なミーティングや講習会が少ないという点に関しては仕事時間外は楽だったなと感じました。

一長一短ではあると思いますが、あの激務に戻りたいかと言われると複雑な気分になるのは低価格サロンです。

結局どちらが儲かるのか

立地が良く、回転率を維持できる前提なら、1000円カットは原価の低さと時間効率の高さで美容室より利益率が高くなりやすいというのが、今回調べた範囲での結論です。

ただしこれは「客が途切れず来てくれる」という条件付きの話で、立地選びに失敗したり競合が増えたりすると、薄利多売の構造がそのまま裏目に出るリスクも大きいということでした。

美容室の場合はカラーやパーマで客単価を上げる余地がある分、1000円カットほど極端な回転率に依存しなくても経営が成り立つという違いもあります。