ワザワザ美容室に行くのは大変。と市販のヘアカラー剤を使ってお家でヘアカラーをする方は多いのではないでしょうか。
そしてすっかり人気になった泡カラー。
今まではクリームタイプのカラー剤ばかりでしたが、「ムラなく染められる」「長い髪の毛の人でも使える」というキャッチフレーズで一気に人気が高くなり、一度は使ったことがある。という人も多いのではないでしょうか。
しかし、「長い髪の毛でも一個で足りる」「塗りやすい」というメリットの他に実は泡カラーに隠れた危険性やデメリットをいうのものがあります。
広告やCMには良いことしか書かれないので、知らない人も非常に多いのです。
※ジャムカラーというのもありますが、基本的にはクリームタイプと同じで、クリームタイプよりやや柔らかい程度だと思ってください(発売元のマンダムに確認済み)
泡カラーとは
泡カラーの生まれた背景
泡カラーとは『泡状にして使うことのできるカラー剤』です。
今まで販売されていたヘアカラー剤というのは、『1剤』である「酸化染料」と「アルカリ剤」に、『2剤』である過酸化水素を混ぜることでクリーム状の薬剤を作って髪の毛に使っていました。
≪ヘアカラーの基本的な流れ≫
①アルカリ剤が髪の毛のキューティクルを開くことで酸化染料を髪の毛の中に入れる
②髪の毛の中で、アルカリ剤と過酸化水素水が反応し酵素が生まれ、その酵素が髪の毛の脱色を行い同時に発色させる
③酸化染料の分子が髪の毛の中で大きくなり、髪の毛の中に閉じ込められることで髪の毛に色が付く
『1剤』『2剤』を出してカップの中で混ぜ合わせて使うものや、容器のボタンを押すことで中で混じり合い、クシの先から混ざったものが出てくる。
というものまで様々です。
しかし、クリーム状のヘアカラー剤の場合、致命的な点が2つありました。それは『1個のカラー剤の量が少ない』そして『自分では塗りにくい』ということ。
クリームタイプの市販のカラー剤の量の多くは、『1剤が40gに対して2剤が80g(1剤の倍)』と作られているものが非常に多いようです。
中には1剤と2剤が40~50gずつしか入っていないかなり少ない物もあります。
ちなみにこの1剤40gという量。プロである美容師が、伸びた根元(黒い部分)だけを染めるために使う量です。人によっては40gだけでは足りないこともあります。
2剤が80gあるとは言え、髪の毛に長さのある人が全体を染めるにはまず間違いなく足りない量です。(かなりカスカスで塗れば可能かもだが、染まりは薄くなる)
1個では足りない…でも二個だと多すぎるし…
それにクリームだと塗りにくい…
こんな悩みを解決するために生まれたのが『泡カラー』なのです。
泡カラーはなぜ泡立つ?
泡カラーもクリームタイプも髪の毛を染める仕組みは同じです。
1剤と2剤を反応させて髪の毛に色素を定着させます。
しかし、大きく違う点が一つ。それは『界面活性剤がヘアカラー剤の中に入っている』ということ。
界面活性剤はシャンプーや洗剤の中に配合されていますが、「油と水を混ぜ合わせる」という性質(乳化作用)があるため石鹸、さらにはトリートメントなどにも使われます。
この界面活性剤を大量に入れることで、泡立つカラー剤が出来るのです。
これだけ聞くと「石鹸やトリートメントにも使われるのなら悪い物ではないのでは?」と思われるかもしれませんが、界面活性剤には1点注意しなければいけない重要なことがあるのです。
界面活性剤は薬剤の吸収力を高める
注意しなければいけないこと。それは界面活性剤の効果の一つに薬剤の吸収を高める効果があるということ。
この性質は、洗剤やトリートメントであればさほど問題がありません。
洗浄成分が油汚れを落としやすくしたり、トリートメントであれば吸収力が高まるのでむしろプラスに働きます。
しかしヘアカラーの場合、『頭皮や髪の毛にダメージを与える成分の吸収力も高めてしまう』という危険があるのです。
「吸収がよくなるなら発色も良くなるの?」という考えもあるかもしれませんが、ヘアカラーというのは髪の毛のダメージが大きければ大きいほど色の落ちは早くなります。
そのため発色が良くなったとしても髪の毛が強く傷んでしまえば結局すぐに色落してしまう可能性が高いです。
毛先にトリートメントを使って保護する人もいる??
これはお客様との会話の中で聞いたのですが、どうやら泡カラーの後に髪の毛がバリバリするのが嫌だから前もって髪の毛の毛先にトリートメントを塗ってダメージを保護しながら使う方もいらっしゃるようですが、正直これはおススメできません。
確かにトリートメントを付けることで髪の毛へのダメージは少なくなります。
ですが、トリートメントは弱酸性で作られているので、ヘアカラー剤と混じり合うとカラーの染色能力がほとんどなくなってしまいます。
色の発色が極端に弱くなってしまうので、「毛先だけ色が入っていない」という状態になりかねません。
泡カラーの危険性
アレルギー体質の人は特に注意
ヘアカラーには大きく分けて2種類のアレルギーがあります。
それは「ジアミンアレルギー」と「アルカリアレルギー」。
軽度であれば痒みや皮膚刺激程度。
重度の場合、顔が腫れたり呼吸器系に障害が出たり、かさぶたが出来て怪我をしたような状態になります。
泡カラーの場合、吸収力が高い分ジアミンやアルカリを、より皮膚が吸収してしまうためアレルギー症状が強く出る可能性も考えられます。
それに、クリームタイプであれば毛先に向かって伸ばすので頭皮にカラー剤が付く量は少なくて済みますが、泡カラーの場合髪の毛全体に満遍なく付けられる反面、頭皮にもベッタリと付いてしまう可能性が高いので注意が必要です。
もし心配な方は事前に皮膚科などでパッチテストを行ってから使用するようにしましょう。
クリームタイプよりも髪の毛の負担は大きい
泡カラーの場合、クリームタイプとは違い界面活性剤の効果でカラーの色素も髪の毛を傷める成分も吸収されやすい薬になっています。
特に、必要以上に長時間放置は髪の毛に色が付かないどころか染まらないで、ただ傷むだけなので必ず説明書の放置時間を守りましょう。
ヘアカラー剤というのはアルカリ性になっている状態で染色能力があります。しかし、1剤と2剤を混ぜて空気に触れ始めたときから空気中の酸素によって酸化を始めます。
時間を置けば置くほど参加してしまい、約30~40分後には染色能力がかなり弱くなっているのです。
つまり、『時間を置けば置くほど染まる訳ではない』ということです。
稀に、泡カラーを髪の毛に使ったまま1時間2時間置いた。という話を聞きますが、頭皮や毛根、髪の毛への刺激やダメージになるので絶対にやめましょう。
実際に泡カラーを使ってみた
泡カラーのダメージ
私のお客様が実際に泡カラーで染め、ダメージが出てしまったのでなんとかしてくれ。という状態の写真を撮らせていただきました。
ダメージに関しては実際に見てもらった方が早いです。
このお客様は元々髪が細く、ダメージを受けやすい髪の毛。
泡カラーはイエロー系で染めたそうですが、染めたてもほとんど発色していなかったとのことです。
根元が黒くて毛先が明るいのは、毛先の方が元々傷んでいたのと、付けやすいので毛先の薬の量が多くなるのです。
放置時間は説明書に書かれていた通り30分。流して乾かした時点で髪の毛はバリバリだったようです。
実際自身が触ってもバリバリとしたような硬い質感でした。
泡カラーの強さに毛先が耐えられなくなってしまった状態です。
良く見ると毛先が真っすぐではなく、チリチリしたような感じになっているのがわかると思います。”縮れ”が発生してしまっているのです。
髪の毛というのは、ある一定のダメージを受けてしまうと髪の毛が耐えられなくなり、真っすぐな形を維持できなくなり、縮れたような状態になります。
これを我々は専門用語で『ビビる』と言います。
※耐えられるダメージというのは個人差があります。
最も避けるべき恐怖の事態ですね。
なぜ恐怖かと言うと、修正が非常に困難だからです。(無理に近い)
「出来る!」という人もいますが、それはあくまで特殊な薬や保護剤があってのことで、すべての美容室に当てはまることではありません。
そのため今回の方も毛先の大部分は切らせていただきました。
毛先が集中的に傷んでいるのは、毛さきの方が細く、様々な施術経験があるので、より傷みやすなっているのです。
個人差はある
髪の毛のヘアカラーの場合、ダメージの出方には個人差があります。
ネットに上がっている「泡カラーで染めてみました」という画像の中にはダメージをそこまで感じない程度で染まっている髪の毛もあります。
全員が全員今回の方の様にダメージが出るわけではありませんが、実際に強いダメージが出ている人もいるので自分にもあり得る可能性としては頭に入れておきましょう。
できるだけ傷ませないためには
とても便利な泡カラー。しかし界面活性剤によるダメージが大きなデメリット。
泡カラーのダメージを防ぐために大切なことは、必要以上に時間を置かないということ。
ヘアカラーは30~40分以上放置してもそれ以降は染まりにほとんど差がないと言われています。
必要以上に時間を置いても髪の毛は染まらずただただ傷むだけ。
パッケージに書かれている目安時間は必ず守るようにしましょう。
泡カラーによるダメージを最小限にするには放置時間がとても大切です。
まとめ
泡カラーは基本的にはクリームタイプのヘアカラー剤と同じ。
界面活性剤が入っていいることで泡立つようにできている。
泡立つのでよほど長い髪の毛でなければ1個で足りる。
ただし、界面活性剤の効果で吸収力が上がるので、髪の毛を傷める成分も多く吸収してしまうことになる。
髪の毛の状態、髪質によってビビってしまうような深刻なダメージににもなる可能性があり、ビビってしまうと基本的には切るしかなくなる。
です。
非常に便利だと思いますが、非常以上のダメージを避けるためにも必ず使用方法は守りましょう。
「できるだけ傷ませたくない!」という方の場合、クリームタイプのヘアカラー剤の方が界面活性剤が入っていない分ダメージの量は少なくなります。
どちらにしても、くれぐれも時間の置き過ぎには注意です。
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