「市販のヘアカラーと美容室のカラーって、実際どう違うの?」
「値段がぜんぜん違うけど、仕上がりや色落ちに差は出るの?」
「セルフカラーでも全然よくない?」
こういう疑問、美容室でもよく聞かれます。先に結論を言うと、
美容室のヘアカラーと市販のヘアカラーは、別物です。
ただ「だから美容室の方がいい」で終わらせたくないので、何がどう違うのかをちゃんと説明します。実際にメーカーへ取材して、毛束を使った色落ち検証もやってみたので、その結果もあわせてどうぞ。
薬剤の違い
市販のヘアカラーメーカーの中には「美容室のカラーと市販のカラーに大差はない」と言うところもあります。
染める仕組みは確かに同じ。1液の酸化染料とアルカリ剤、2液の過酸化水素水を混ぜて発色させるというのは変わりません。
ただ、染めた後の仕上がりとその後の傷み方に関してはしっかり差があります。

美容室に「泡カラー」はない
市販のヘアカラーでよく見かける泡タイプ。自分で塗りやすくて便利なんですが、美容室では扱っていません。
その理由は3つ。傷みやすい・均一に塗れない・塗り分けができない、これに尽きます。
泡カラーはカラー剤に泡立つ界面活性剤を大量に加えて作られています。泡になることで広がりやすくなる一方、界面活性剤には薬剤の浸透を強める効果があるので、アルカリ剤(髪を傷める成分)まで髪の芯まで届きやすくなってしまいます。
傷んだ髪は色持ちが悪くなります。色が入りやすくなっても、同じくらい抜けやすくもなる、ということですね。
オキシ(過酸化水素水)の濃度が選べない

ヘアカラーの2液、いわゆる「オキシ」と呼ばれる過酸化水素水には濃度があります。薬機法により、日本の美容室で使える最高濃度は6%と定められています。
濃度が高いほどキューティクルを開かせる力が強くなり、カラー剤が髪の内部に届きやすくなります。なので明るくしたいときは6%、暗くするだけなら3%という使い分けができます。
ところが市販のカラーには3%がありません。全部6%です。
暗くするだけの染め直しでも、すでに傷んでいる毛先にも、同じ6%が使われます。必要以上の負担が毎回かかるのが、市販カラーの隠れたデメリットです。
例外として白髪染めは暗い色でもしっかり色を入れる必要があるので、美容室でも6%を使います。
アルカリ剤の種類が違う
カラー剤がキューティクルを開くために使う「アルカリ剤」の種類が、サロン用と市販で異なります。
サロン用のカラー剤は主にアンモニアを使用しています。アンモニアは揮発性があり、染色が終わると空気中に飛んでいきます。あのツンとした独特の匂いはこれが原因ですが、役割が終わったら髪から出ていくので残留ダメージが少ない。
一方、市販カラーの多くはモノエタノールアミンというアルカリ剤を使っています。匂いがなく使いやすいのですが、揮発しないため染色後も髪の中に残りやすいのが難点です。残ったアルカリ剤がじわじわとダメージを与え続けるので、染めた直後より数日後の方が髪がパサつくのはこれが原因のひとつです。
なお、最近では市販カラーにもアンモニアを配合したものが増えてきています。成分表に「アンモニア水」と書かれているものはサロン用に近い特性なので、ダメージが気になる方は選ぶ際の参考にしてみてください。
トリートメント成分の配合量が違う
美容室でカラーだけしてもらったのに、なんか手触りが良くなった気がする。そういう経験ありませんか?
サロン用のカラー剤にはもともとダメージ補修のトリートメント成分がしっかり配合されています。カラーしながら同時に補修もしているんですよね。
市販のカラーに付属しているトリートメントはシリコン剤が中心で、一時的に手触りを良くする効果はあるものの、2〜3回のシャンプーでほぼ落ちてしまいます。
薬剤の強さが違う
「ダメージ量が1.5倍違う」と言われることもあります。自分も実際に体感としてそれくらいは差があると思っています。
これにはセルフカラーの「付きムラ」も関係しています。どうしても均一に塗るのが難しいので、薄く付いた部分でも染まるように、市販カラーはパワーを上げて作られています。泡カラーも一見均一に見えますが、泡自体が均一に混じり合っているわけではないので必ずムラになります。
素人が自分で使うことを前提に作られている以上、パワーを上げざるを得ない。それが市販カラーが傷みやすい理由のひとつです。
ジアミンアレルギーのリスクも知っておいてほしい
これは市販・美容室どちらにも関わる話なんですが、最近特に深刻になってきているので触れておきます。
アルカリカラー(一般的なヘアカラー)には「パラフェニレンジアミン」などのジアミン系成分が含まれています。このジアミンは繰り返し使うことで体内に蓄積され、ある日突然アレルギーを発症することがあります。
症状は頭皮のかゆみや赤みから始まり、重症化すると顔が腫れたり、アナフィラキシーショックを起こすケースもあります。一度アレルギーが出ると、次からの反応はより強くなるので注意が必要です。
美容室では頭皮に異常が出やすい方は事前にパッチテストを行ったり、頭皮にできるだけつかないように施術できますが、市販カラーの場合は技術的なカバーができない。
特に頭皮に異常の出やすい方が市販カラーを使う際は毎回48時間前のパッチテストを必ず行ってください。
塗り方の違い
薬剤の差だけでなく、塗り方でも仕上がりに大きな差が出ます。
「説明書通りに塗ったのに根元だけ明るくなった」という失敗、経験がある方も多いと思います。髪の毛には染まりやすい部分と染まりにくい部分があって、塗り始めた時点からすでに発色が始まっています。この2つを考えないとキレイに仕上がらないんですよね。
根元は体温の影響を受ける

「セルフカラーをしたら根元だけ明るくなってしまった」これは体温のせいです。
カラー剤は温度が高いほど発色が早くなる特性があります。頭皮に近い根元は体温(35〜37度)の影響を受けやすいので、他の部分より早く・明るく発色してしまいます。
美容室では「根元は明るくなりやすい」ことを前提に薬を選んで、根元を少し外してから時間差で塗ります。この時間差で最終的に色が揃うように計算しているんですよね。
染まりやすい場所・染まりにくい場所がある

○で囲った部分が襟足。後頭部の襟足は髪が太くハリがあって、染まりにくいのが特徴です。

反対に顔まわりの産毛のような細い髪は、染まりやすくすぐ明るくなる部分です。
美容室でカラーを塗るときは、必ず後頭部(染まりにくい部分)から始めます。最後に顔まわり(染まりやすい部分)が来るように逆算して塗っているんですよね。
セルフカラーだと鏡を見ながら塗るので、どうしても顔まわりや分け目に先に多く付いてしまいます。「前ばかり染まって後頭部が黒く残ってしまった」のは、塗り始める場所が逆だったのが原因です。
2種類の薬で塗り分けをする

たとえばこの写真のように、根元が黒く伸びていて毛先が14レベルくらい明るい状態を、10レベル(明るめの茶色)に揃えたいとします。
市販のカラーは基本1種類なので、10レベルの薬を全体に塗ることになります。ただこれだと、根元は10レベルになっても毛先の明るい部分は12レベル程度にしか暗くなりません。結果として根元から「明るい→暗い→明るい」という3色になってしまいます。

美容室では根元と毛先で薬を変えます。根元には目的の明るさ、毛先には目的より暗い薬を使うことで、仕上がりで色が揃うように調整します。さらに毛先は6%のオキシを使わなくても3%で十分染まるので、ダメージも抑えられます。この「塗り分け」ができるかどうかは、仕上がりの差に直結します。
メーカーに直接聞いてみた
市販のヘアカラーメーカー2社と、プロ用ヘアカラーメーカー1社に「色落ちに差はあるか」を直接問い合わせてみました。
市販カラーA社 | 染める前の髪の傷みによって色落ちに違いが出る。美容室との差はない |
市販カラーB社 | 色落ちに差はない |
プロ用ヘアカラーメーカー | 美容師が髪のダメージを見極めながら塗るので、市販より色持ちがいい |
市販メーカーは「差なし」、プロ用メーカーは「技術力で差が出る」という、立場通りの回答でした。
美容師としての本音を言うと、薬の差よりも「余計な傷みを避けられる」という部分で長期的に差が出てくると思っています。
市販カラーは6%固定ですが、美容室では傷みの状態に応じて3%に変えられます。この積み重ねが半年・1年後の髪の状態の違いになってきます。
実際に色落ちを検証してみた
取材だけだと「各社の言い分」で終わってしまうので、自分で毛束を使って比較してみました。

ブリーチした同じ条件の毛束を2本用意。

片方を市販のアッシュカラー(ビューティーン メタリックアッシュ・クリームタイプ)、もう片方を美容室用のマットアッシュで染めて、シャンプーするたびに写真で比較しました。
染めたて


上が市販、下が美容室用です。染めたての時点ではどちらもキレイなアッシュで、正直大きな差はありません。昔より市販カラーの品質は確実に上がっているなという印象で、ここは素直に驚きました。
シャンプー1回


室内・屋外ともにまだ大きな差はなし。この段階ではどちらも同じような印象です。
シャンプー2回


全体的に少し色が薄くなってきました。ブリーチしている髪なので色落ちが早いのは仕方ない部分ではありますが、まだどちらに大きな違いはないです。
シャンプー3回


3回あたりから差が出始めました。市販カラーは濃く染まっている部分と薄い部分のムラが見えてきます。美容室用はムラは少ないですが、全体的に少し薄くなってきた印象。
シャンプー5回


さらに違いが出てきました。市販カラーは色がまだ残っていますがムラが目立ちます。美容室用は色が薄くなっている分、均一でキレイな印象です。
今回は使った色味が完全に同じではないので、色の濃さに差が出るのはある程度仕方ないですが、傾向はわかりやすく出ていると思います。
シャンプー10回


10回になるとどちらもかなり薄くなりました。屋内では色の違いがわかりますが、屋外だとそこまで差がない印象です。
シャンプー20回


20回時点では美容室用の方が色は薄め。ただ色ムラが目立つのは市販の方でした。洗い流すほどに染まり方の差が出てくる、という感じです。
色落ちの検証結果 どっちがおすすめ?
市販のヘアカラー | 色は濃く入るが、洗うほどにムラが目立ってくる |
美容室のヘアカラー | 色は薄くなりやすいが、ムラが少なくキレイに色落ちする |


上が市販、下が美容室用で染めているところです。塗っていて気づいたのですが、市販カラーはやや水っぽいのに対し、美容室用は粘度が強くて髪に絡みつく感じがします。この粘度の差がムラの出方の違いにつながっているのかなと感じました。
色落ちに大きな差はない。ただムラになりやすいのは市販カラー。これが正直な結論です。
コスパで言えば圧倒的に市販カラーですし、「たまに自分で染める」くらいなら全然アリだと思います。ただ定期的に繰り返すなら、ダメージの蓄積が変わってくるので、美容室でのカラーをおすすめします。
ヘアカラーを長持ちさせるポイント
市販でも美容室でも共通して使えるコツを紹介します。
カラー当日はシャンプーしない
カラー直後の髪はキューティクルがまだ完全に閉じていない状態です。この状態でシャンプーすると色が流れやすくなります。当日はお湯で流す程度にして、シャンプーは翌日以降がベターです。美容室でカラーした後に「今日はシャンプーしないでください」と言われるのはこのためです。
洗浄力の強いシャンプーを避ける
シャンプーの洗浄力によって、色落ちのスピードが変わります。成分表に「ラウレス硫酸ナトリウム」「オレフィン(C14-16)スルホン酸Na」などが含まれているシャンプーは洗浄力が高めで、色味も一緒に流れやすいです。
「コカミドプロピルベタイン」などをメインにしたアミノ酸系シャンプーや、低刺激タイプのシャンプーは洗浄力がマイルドでカラー持ちが良くなります。
海水・プールには注意
海水浴やサーフィンで海水に浸かると、塩分が髪内部の水分と結びついてカラーの色素ごと外に引き出してしまいます。一気に色が落ちるので要注意です。
プールの塩素は海水ほどの影響はありませんが、上がったあとできるだけ早くシャンプーして塩素を落とすようにしましょう。
カラーシャンプー・カラートリートメントは色に合わせて選ぶ
カラーシャンプーやカラートリートメントは色持ちを補助してくれる便利なアイテムです。最近はドラッグストアでも手軽に買えるようになりましたが、染めた色に合わせて選ばないと逆効果になることがあるので注意してください。
アッシュなどの寒色系で染めたなら、同じアッシュ・グレー・ブルーなどの寒色系を選んでください。ピンク・オレンジなどの暖色で染めたなら赤系を。真逆の色を混ぜるとお互いを打ち消し合ってブラウン(元の髪色)に近づいてしまいます。
「違う色しか持ってない!」という場合は、今のカラーが自然に色落ちしてから使うと、色の変化も楽しめますよ。
まとめ
市販カラーと美容室カラーの違いをまとめるとこうなります。
- 薬剤の成分・強さ・残留性に違いがある
- 塗り方の技術(体温計算・部位別の順番・塗り分け)で仕上がりが変わる
- 色落ちの差は大きくないが、ムラの出方は市販の方が目立ちやすい
- 長期的に繰り返すと、ダメージの蓄積に差が出てくる
- 市販カラーはパッチテスト必須。ジアミンアレルギーは突然発症することがある
以前、市販カラーの持ち込みで染めることができる美容室に勤めていたことがあります。美容師として市販のカラーを何度も扱い、染めた後のダメージの違いも見てきたので、これはハッキリ言えます。
「たまにセルフで染める」程度なら市販カラーで全然問題ないです。ただキレイに仕上げたい、髪をなるべく傷めたくないという方は美容室で染めた方が長い目で見ると違いが出てきます。
何か聞きたいことがあればコメントください!
※本記事は「美容室のカラーと市販カラーは同じもの?違うもの?」「市販カラーと美容室カラー 色落ちの違いを検証!」の2記事を統合・改修したものです。
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