美容師試験の合格率は?落ちてしまった後の内定リアルと実際

先日、施術中にお客様から「美容師さんって国家試験があるんですよね、それってどれくらい受かるものなんですか」と聞かれました。

正直「たしか8割くらいだった気がします」となんとなくでしか答えられなかったので、これを機にちゃんと調べてみることにしました。

そして私が勤めてきたサロンでどんな状況だったのかなど体験談踏まえてお話しします。

結論、合格率だけ見ると「わりと受かる試験」

美容師試験を頑張る人

理容師美容師試験研修センターが公表している最新のデータを見てみると、直近(第53回・春期)の美容師国家試験は、受験者19,850人に対して合格者17,273人でした。

合格率にすると87.0%です。

10人受けたら9人近くは受かる計算なので、数字だけ見ると「思ったより厳しくないのでは」と感じるかもしれません。

参照元:
公益財団法人 理容師美容師試験研修センター「過去の試験実施状況」

実際正直なところ美容師の学科の試験に関しては、医学系の国家試験などのように「難関でどんなに勉強しても受からない」というわけではなく、「ちゃんとしっかり勉強すれば受かる」という体感です。

実技の試験に関しても、完璧な作品を作らないといけないのかと言われるとそうではなく、まず時間内に終わるという最低条件をクリアしていれば、「え?あれでも受かったの?」という人が本番でもいたのはここだけの話です。

でも、同じ年でも春と秋で全然違う

ただしこれは、春(1〜3月頃)に実施される回の数字です。

同じ年度の秋(8〜9月頃)に実施された回を見てみると、受験者4,569人に対して合格者2,989人で、合格率は65.4%まで下がります。

同じ美容師国家試験なのに、20ポイント以上も差があるわけです。

過去10回分をさかのぼってみても、春はだいたい80〜90%台、秋は50〜65%台というのが続いていて、これは今回だけの特殊な数字ではなく、毎回見られる傾向のようです。

参照元:
公益財団法人 理容師美容師試験研修センター「過去の試験実施状況」

なぜ春と秋でこんなに差がつくのか

試験の内容や難易度そのものは、春も秋も変わりません。

差が出る一番の理由は、受験する人の顔ぶれが違うからだと言われています。

春の試験は、昼間課程を2年間しっかり通って卒業を控えた新卒生が中心です。

一方の秋は、働きながら学ぶ通信課程の卒業生や、春に一度落ちてしまった人の再挑戦が中心になります。

現場にいても、通信課程で学びながらお店でアシスタントをしている人は、練習時間の確保がどうしても難しいという話はよく聞きます。

つまり「秋は難しい試験だから受からない」のではなく、「秋は条件が厳しい中で受けている人が多い」というのが実態に近いようです。

参照元:
国際文化理容美容専門学校

通信課程の人は、日中は仕事。空いた時間や終わってから学科の勉強や実技の勉強になります。

専門学校の場合、日中全てを試験のために勉強、練習できるので合格率に差が出てしまうのはしかたないのかもしれません。

落ちても半年後にもう一度挑戦できる

美容師試験にもう一度頑張る人

美容師国家試験は年に2回あります。もし落ちてしまっても、次のチャンスは半年後にあります。

中には年に1度しかない国家試験もあるので、かなり寛大だなとは思います。

もし、実技と筆記のどちらか片方だけ合格していた場合、次の回に限ってその科目が免除される制度もあります。

結果的に落ちてしまっても「もう一回ゼロからやり直し」というわけではなく、苦手だった方だけに集中して勉強し直せる仕組みにはなっているのです。

とはいえ、半年間モヤモヤした気持ちを抱えたまま働くことになるので、精神的にはなかなかしんどい期間だと思います。

「内定取り消し」になる店とならない店がある

美容室の受付の女性

美容専門学校の学生は、卒業を待たずに在学中から就職活動をするのが一般的です。

そのため多くの場合、4月の入社が決まった状態で、3月の国家試験本番を迎えることになります。

私の場合、卒業を待たずに内定した美容室でアルバイトとして土日働いていましたが、そんなケースもあります。

ここで気になるのが、もし不合格だった場合に内定はどうなるかという点です。

調べてみると、対応はサロンによってかなり分かれるようです。

不合格を理由に内定を取り消してしまうお店がある一方で、免許が取れるまでアシスタントとして雇い、秋の再挑戦をサポートしてくれるお店もあります。

看護師や薬剤師のような年1回しか試験がない資格だと内定取り消しになりやすい傾向がある一方、美容師や理容師は年2回チャンスがあることもあって、比較的そのまま雇ってもらえるケースが多いという見方もあるようです。

とはいえ「絶対に大丈夫」というわけではないので、就職活動の段階で、不合格だった場合の対応をあらかじめ確認しておいた方が安心です。

参照元:
サロビノート

私の勤務していた美容室でも、試験に合格できなかった新入社員がいました。

その人は、半年間受付として業務。

一切お客様に触れることはありませんでしたが、半年後合格し無事美容師になっていました。

本人としては悔しかったはずですが、すごく頑張っていたのを今でも覚えています。

小さい個人運営の美容室だと、即戦力が欲しいので美容師試験に受からなかった場合はそのまま内定はなかったことに。

逆に大手チェーンだと、教育カリキュラムがしっかりしていて手の足りなさも他の人でカバーできる。

そのため不合格でも勤務はさせてもらえるパターンが多いというのが今までの体感ですね。

受かった人が全員美容師になるとは限らない

ここまで見ると「合格すればみんな美容師になっていく」ように思えますが、実はそうとも言い切れません。

美容師免許を持っている人の累計は、2023年時点でおよそ142万人と見積もられています。

これに対して、実際に美容室で働いている美容師の数は、同じ時期でおよそ58万人です。

つまり免許は持っているけれど美容師としては働いていない、いわゆる「休眠美容師」が、推計でおよそ84万人もいることになります。

免許を持っている人のうち、実際に現場で働いているのはおよそ4割程度という計算になるわけです。

出産や育児、体調不良などで一時的に離れている人も含まれるので、全員が「辞めた」わけではありませんが、この数字を見ると、免許を取ったからといって、その後もずっと美容師を続ける人ばかりではないことがよく分かります。

参照元:
ホットペッパービューティーアカデミー

私の同期の専門学校生も、学科か実技の片方で落ちてしまったから簡単に美容師になるのをあきらめてしまった。

美容師試験にせっかく合格したのに、そもそも美容師にならなかった。

ほんの数カ月勤めてあっという間にやめてしまい、そのまま美容師をしていない。

なんて人が山ほどいました。

10年後の離職率が9割と言われる美容師業界。目指す人に比例してせっかくのスキルを活かせていない人も本当にたくさんいるのです。

まとめ

美容師国家試験は、春だけ見れば合格率87%と、決して低いハードルではありません。

ただ秋になると65%まで下がりますし、そもそも受かった後も、内定取り消しのリスクや、その後美容師を続けるかどうかという別の壁が待っています。

数字だけ見ると簡単そうに見える試験でも、その裏には受験者ごとの事情や、資格を取った後の現実がいろいろと隠れているものだなと、あらためて感じました。

これから美容師を目指す人には、試験の合格がゴールではなく、あくまでスタート地点だということを、心のどこかに置いておいてもらえたらうれしいです。