現場にいると、一緒に入ったアシスタントがいつの間にかいなくなっている、ということがちょいちょいあります。
寿退社や地元に戻るという分かりやすい理由のときもあれば、特に何も聞かないまま、気づいたら会わなくなっている人もいます。
ごくわずかですが、バックレたなんて人も…
正直「美容師って辞める人多いよな」というのは肌感覚としてずっとあったので、実際の数字と、辞めた後にみんな何をしているのかを、今回まとめて調べてみました。
目次
3人に1人以上が最初の職場を3年以内に辞めている

リクルートの調査によると、学校を卒業して最初に就職した美容室での勤務期間は、1年未満で辞めた人が10.0%、1年以上3年未満で辞めた人が26.7%でした。
合わせると36.7%、つまり3人に1人以上が、最初の職場を3年以内に離れている計算になります。
美容師としてある程度独り立ちできるまでに数年かかることを考えると、なかなか厳しい数字だと感じます。
参照元:
株式会社リクルート「美容サロン就業実態調査(2024年)」
自分と同期の美容師も、優等生ほど以外にパッとやめてしまったり、データ以上に辞めている人が多いと思います。
私も一番初めの美容室を1年ほどで辞めましたが、こんなアンケート取られた記憶がないので、該当漏れしている人が絶対にいるはずです。
辞める理由の1位は給与
最初の職場を辞めた理由を聞いた調査では、1位が給与に関する不満で、4人に1人以上が挙げていました。
続いて、職場環境や人間関係への不満も上位に入っています。
現場の感覚としても、これはかなり納得できる部分があります。
アシスタント期間は思うように稼げない時期が長く続きますし、狭い店舗で働く分、人間関係のストレスもダイレクトに響きやすい仕事です。
技術面よりも先に、働く環境の部分で心が折れてしまう人が一定数いるのだと思います。
参照元:
株式会社リクルート「美容サロン就業実態調査(2024年)」
私が一番初めに勤めた美容室は、9時半スタートで夜7~8時まで営業。
その後に夕飯で夜9時ごろから夜中の1~2時まで練習。
その後ミーティングで帰りが夜中2時半~3時というイカれた勤務体系でした。
これを単純に自給換算すると、大体350円ぐらい。
練習を給料に入れるのは当時NGなのですが、それでも
「バイトいた方がいいじゃん…」と考えたのを今でも覚えています。
辞めた後、実際は何をしているのか
ここが今回一番気になっていた部分です。
同じ調査によると、最初の職場を辞めた人のうち、転職先でも美容師を続けている人は55.4%でした。
つまり残りの44.6%、半数近くは、美容とは関係のない職に就くか、どこにも就職していないという結果になっています。
「同じ美容室業界の中で移動しているだけ」というイメージを持っていたので、半分近くが業界そのものから離れているというのは、正直予想より多い数字でした。
参照元:
株式会社リクルート「美容サロン就業実態調査(2024年)」
具体的にどんな仕事に転職しているのか

では、美容業界を離れた人は具体的にどんな仕事に就いているのでしょうか。
大規模な公的統計ではないのですが、元美容師57人を対象にした個人ブログの独自アンケートに、参考になりそうな傾向が出ていました。
それによると、女性はサービス業や医療福祉、不動産、百貨店・専門店あたりへの転職が多く、職種としては事務系や接客・販売系を選ぶ人が目立ったそうです。
男性はメーカー(電子・電気機器)や建設・住宅関係、教育業界への転職が多く、職種としては技術系や事務系が中心という結果でした。
美容師時代に培った接客力やコミュニケーション力を、そのまま活かせる仕事を選んでいる人が多い印象です。
参照元:
美容師のみちしるべ(元美容師57名への独自アンケート)
私の周囲では、アパレル関係が一番多かったかなと。次いで飲食や製造業。営業職や農協に勤めたなんて人もいましたね。
「結婚して子供が生まれたので、美容師の給料ではやっていけないから夜勤のある仕事に行く」
という話は本当にたくさん聞きました。
若くして結婚すると、アシスタントの給料なので家族を養うのはぜったに無理です。
夢ではなく現実を見ての判断をした人もたくさんいた印象でした。
美容師全体で見ても、離職率はかなり高い

最初の職場だけの話ではなく、美容師というキャリア全体で見ても、この業界は入れ替わりが激しいです。
美容師免許を持っていて、一度は現場に立った経験がある人のうち、今はもう美容師をしていない人がどれくらいいるかを示す調査があります。
2025年の数字では45.7%、つまりほぼ2人に1人が、美容師という仕事から一度は離れているということになります。
自分の周りを振り返ってみても、同期でスタートした人のうち、今も現場に残っているのは間違いなく半分以下、というのが正直な感覚に近いです。
専門学校の時に、講師として来てくれた超有名美容師が、「ここにいる人、10年後ほとんど美容師していません!!」と言い放って、
「なんだコイツは、失礼な…」と思ったことがありましたが、実際現実言ったとおりになりました。
一緒に頑張ろうと専門学校を卒業していった顔が、気づけば全然違う仕事をしている。この業界にいると、そういう瞬間は一度や二度ではありません。
ちなみに理容師の離職率は37.1%で、美容師よりは低い数字でした。
同じ「髪を切る仕事」でも、ここまで差があるのは意外でした。
そしてもうひとつ、現場で一緒に働くことも多いネイリストは、離職率67.9%とさらに高く、しかも前年よりさらに上がっています。
特に30代・40代での離職が増えているそうで、ライフステージの変化が重なりやすい年代であることも関係していそうです。
同じ店舗の中、同じお客様を相手にしていても、職種によってこれだけ「続けやすさ」に差が出るというのは、隣で働いている身としても考えさせられる数字です。
昔よりは、働き方自体が変わってきている

ここまで厳しい数字が続きましたが、業界の中にいる立場から見ると、少しずつ状況は変わってきているとも感じます。
一昔前の美容業界は、営業が終わった後、夜遅くまでカットやカラーの練習をするのが当たり前という空気が強くありました。
現場の感覚としても、そういう文化は以前に比べてだいぶ薄れてきています。
知人の有名美容室でも「今遅くまで練習させるとすぐ辞めちゃうからさ…」と言っていました。
さらに、働き方改革関連法が2019年から順次施行されて、時間外労働に上限が設けられたこともあり、以前のように際限なく練習させるサロンは減ってきました。
予約状況で出勤を調整できるフレックスタイム制を取り入れたり、週30時間勤務でも正社員になれる制度を用意したりと、働き方の選択肢を増やす美容室も出てきています。
求人の出し方も変わってきていて、SNSで福利厚生や休日の多さをアピールしながら採用活動をするサロンも増えましたね。
キット美容師の人でTiktok見ている人は一度は見たことがあるはず。
以前は「技術と根性」を前面に出して人を集めていた業界が、今は「働きやすさ」も含めてアピールする時代になっているのは、現場にいても実感するところです。
参照元:
Bizリジョブ「美容室で働き方改革を進めるためのポイント」
辞めても、また戻ってくる人がいる
数字だけ見ると厳しい業界に見えますが、一度美容師を辞めた人が、また美容師に戻ってくるケースも少なくありません。
現役美容師のうち、4割以上が「一度美容師を辞めた経験がある」と答えていて、離職していた期間は1年以上3年未満が最も多く、次いで3年以上5年未満でした。
復職のきっかけとして一番多かったのは「資格を生かした仕事の方がいいと思い直したから」で、2番目が「やっぱりこの仕事が好きだから」という理由でした。
現場にいても、一度他の仕事を経験してから戻ってくるスタッフを見かけることがあります。
そういう人たちを見ていると、外の世界を知ったうえで選び直しているぶん、覚悟が違うというか、腰を据えて働いている印象を受けることが多いです。
参照元:
株式会社リクルート「美容サロン就業実態調査(2024年)」
まとめ
最初の職場を3年以内に辞める人が3人に1人以上、そのうち半数近くが美容業界そのものから離れていく。
数字にしてみると、あらためて厳しい世界だなと感じます。
一方で、一度離れた人が「やっぱり好きだから」と戻ってくるケースも一定数あるのは、この仕事の面白いところだとも思います。
華やかに見える仕事の裏側には、こういう入れ替わりの激しさがあるということも、知ってもらえたらうれしいです。




