まつ毛エクステまつ毛パーマは美容師免許が必要 制度が違う昔と今

先日、お客様から「ここって、まつ毛エクステとかまつ毛パーマもやってもらえたりします?」と聞かれました。

「すみません、うちのサロンでは扱っていないんです」とお答えしたのですが、まつ毛エクステの施術自体は美容師免許があればできる仕事です。

そのやりとりの中で、ふと「そういえば、いつから美容師免許が必要になったんだっけ」と、自分でも由来をちゃんと知らないことに気づきました。

せっかくなので、まつ毛エクステとまつ毛パーマにまつわるルールと、その裏にある歴史を調べてみました。

まつ毛エクステもまつ毛パーマも美容師免許がないとできない

マツエクマツパーの紹介

まつ毛エクステもまつ毛パーマも、施術には国家資格である美容師免許が必要です。

まつ毛エクステやまつ毛パーマの施術を専門にする人は「アイリスト」と呼ばれますが、これは職業名であって、国家資格の名前ではありません。

美容師免許さえあれば、美容室で働きながらまつ毛の施術をすることもできますし、逆にまつ毛専門サロンに就職することもできます。

さらに、施術は保健所に届け出た「美容所」でなければ行えないというルールもあります。

参照元:
J-Net21「まつ毛エクステサロン」

でも実は、最初から免許が必要だったわけじゃない

乱立するまつ毛サロン

ここまで読むと「目元を扱うんだから、資格が必要なのは当たり前」と思うかもしれません。

でも、まつ毛エクステが日本に登場したのは1998年ごろで、当時は資格も特別な規制もありませんでした。

エステサロンや美容室、まつ毛専門店など、いろいろな業態がこぞって参入し、あっという間に広まっていったのを覚えています。

資格がいらないということは、誰でも開業できるということ。

昔池袋で働いていたとき、周囲に凄まじい勢いでまつ毛サロンが乱立していきました。

「え?またできたの?」というペースです。

美容室に比べて省スペースで済み、需要があるので起業家たちは「どんどん作ろう!!」となったわけですね。

今でこそ「まつ毛エクステの施術には美容師免許が必要」というのは業界の常識ですが、この常識自体、実はここ20年くらいでできあがったものなのです。

参照元:
J-Net21「まつ毛エクステサロン」

トラブルが増えて、社会問題になった

シアノアクリレートについて

資格が不要だった時期、まつ毛エクステの利用者からは、目の充血やまぶたの腫れ、かゆみといった相談が相次いでいました。

中には、接着剤が目に入って角膜に傷がついたというケースも報告されています。

現場にいると、目元というのがどれだけデリケートな部分か、日々の施術で実感することが多いです。

顔剃りひとつとっても法律で厳しく線引きされているくらいですから、接着剤を使って目のすぐそばに人工毛をつける施術に、専門知識が必要なのは自然な流れだったのかもしれません。

まつ毛エクステで使う接着剤(グルー)は、主にシアノアクリレートという成分でできています。

瞬間接着剤にも使われる成分で、空気中のわずかな水分に反応してすばやく硬化するのが特徴です。

このシアノアクリレートが硬化するときにホルムアルデヒドという物質を放出することがあり、これがアレルギー反応や目の刺激を引き起こす原因のひとつとされています。

国民生活センターがグルーの成分を調査した結果でも、シアノアクリレートの一種にアレルギー性皮膚炎や眼刺激性のおそれがあることが指摘されています。

つまり、まつ毛エクステのトラブルは施術者の技術不足だけでなく、使っている接着剤そのものの性質とも関係しているというわけです。

参照元:
まつげエクステ商材の松風

2008年、厚労省が「美容行為にあたる」と通達を出した

こうした健康被害を受けて、2008年3月、厚生労働省は「まつ毛エクステンションは美容師法に基づく美容行為にあたる」という通達を全国の自治体に出しました。

これによって、まつ毛エクステの施術は事実上、美容師免許を持つ人しかできないというルールが確立しました。

面白いのは、この2008年の通達がいきなり出てきたわけではないという点です。

厚労省の通達文書を確認すると、その前段階として2003年に大阪市からの問い合わせに対して「エクステンションは美容師法上の美容にあたる」と回答していたこと、
さらに2004年にはまつ毛パーマ用の薬剤について「まつ毛に関する施術は美容行為である」と位置づける通知が出されていたことが記されています。

つまり、まつ毛パーマの方が先に美容行為として位置づけられていて、まつ毛エクステはその考え方を踏まえて2008年に改めて全国に周知された、という順番だったわけです。

普段何気なく「まつ毛エクステ」とひとまとめに呼んでいますが、制度の成り立ちの中では、パーマとエクステで少し違う道をたどってきたんですね。

参照元:
厚生労働省「まつ毛エクステンションによる危害防止の徹底について」

通達が出たあとも、無資格営業の摘発は今も続いている

2008年に通達が出たあとも、無資格のままお金を取って施術をする人がいなくなったわけではありません。

2014年6月には、名古屋のエステサロン経営者が、無資格の従業員6人にまつ毛エクステの施術をさせていたとして美容師法違反で略式起訴され、70万円の罰金を命じられました。

2016年2月には大分で、無免許でまつ毛エクステとアートメイクの施術をしていた美容家が、医師法および美容師法違反の疑いで逮捕されています。

2017年12月にも、東京都内で無資格のまままつ毛エクステを施術していた主婦が、美容師法違反の疑いで書類送検されました。

こうして見ると、通達から10年近く経ったあとも、無資格営業の摘発が全国で続いていたことが分かります。

現場にいると、こうしたニュースを見るたびに、免許を持って堂々と施術できることのありがたさを改めて感じます。

皆さんもまつ毛サロン選びの際は、ホームページがしっかりしている、ホットペッパービューティーに登録されているなど信頼のおける店選びが大切です。

参照元:
理美容ニュース「美容師法違反で、70万円の罰金刑」理美容ニュース「また美容師免許持たず『まつ毛エクステンション』で逮捕」理美容ニュース「まつ毛エクステで、美容師法違反容疑」

男性のお客様も増えている

まつ毛サロンに行く男性

最近は、男性がまつ毛エクステやまつ毛パーマを利用するケースも増えてきています。

ダイヤモンド・オンラインの記事では、男性向けにまつ毛メニューを扱うサロンのオーナーが、コロナ禍以降まつ毛パーマを受ける男性が増えたと話していました。

そのサロンでは施術のおよそ7割が男性向けのまつ毛パーマで、まつ毛エクステの方は意外にも40代から50代の利用が多いそうです。

営業職や経営者など、人と会う機会が多い男性を中心に広がっているとのことでした。

現場にいると、男性のお客様から眉やヒゲの相談を受けることは増えてきた実感がありますが、まつ毛まで気にされる方が多いというのは、正直まだあまり実感できていない部分ではあります。

ただ、メイク男子が増えてきたということは女性にとって当たり前の文化を男性が勉強しなくてはいけない時代になっていくのかもしれませんね。

参照元:
ダイヤモンド・オンライン「男性の『まつげパーマ』が人気急上昇」

最初からまつ毛だけを目指す、という選択肢もあるにはある

美容専門学校を卒業したあと、ヘアサロンでの勤務を一度も経験せず、まつ毛専門サロンに直接就職するという道を選ぶ人もいます。

そもそも美容師免許を取りたい目的がまつ毛サロンという方。

美容師免許さえあれば法律上は問題ないですし、実際にそういう求人も見かけます。

ただ、これは個人的にはあまりおすすめしない選択肢だと感じています。

専門学校の先生も「一旦は美容師の道に進んだ方がいい」という方も多いようです。

理由は、ヘアの現場を一度も経験しないまま進んでしまうと、あとで「やっぱり髪の仕事もしてみたい」と思ったときに、技術の土台がない状態からのスタートになってしまうからです。

逆に美容師を経験した後にまつ毛サロン、ネイルサロンに転向する人はたくさんいるので、そこまでデメリットはありません。

「なるほど!ジョブメドレー」に掲載されていた、美容師からアイリストに転向した方のインタビューでも、今後はまつ毛エクステの人気が落ち着いていくだろうという見通しが語られていました。

流行り廃りがある技術だからこそ、というのがその理由でした。

これはその方個人の見通しであって、業界全体の統計ではありませんが、最初から選択肢を1つに絞ってしまうより、まずはヘアの現場を経験しておく方が、後々の可能性は広がりやすいのかなと思います。

参照元:
なるほど!ジョブメドレー「アイリスト7年目 26歳/転職3回(美容師→アイリスト)」

美容師を辞めて、まつ毛やネイルの仕事に移る人も多い

まつ毛サロンに就職する女性

周りの先輩や同僚を見ていても、ヘアの現場を離れて、まつ毛エクステやネイルの道に進んだ女性は少なくありません。

さきほど紹介したインタビュー記事でも、新卒で美容室に入ったものの3ヶ月ほどで退職し、その後アイリストに転向した方が「私みたいに、美容師としてやっていくことを諦めてアイリストになる人って多いみたいです」と話していました。

これも個人の体験談であって統計データではありませんが、私が働いていたお店の後輩の女性も同じことを言っていました。

転職の理由として多いのが、シャンプーなどで手が荒れてしまうことです。

まつ毛エクステ専門の求人サイトでは、長年の手荒れがきっかけで、美容師免許を活かせるまつ毛の仕事へ転向したという例が紹介されていました。

また、まつ毛エクステサロンは美容室に比べて必要な設備が少なく、開業のハードルが比較的低いという特徴もあります。

将来的に自分の店を持ちたいと考えたとき、まつ毛の技術はその選択肢のひとつにもなりうる、というわけです。

参照元:
まつげエクステ@サロンナビ「その他の美容師からの転職理由」

まとめ

まつ毛エクステもまつ毛パーマも、今では美容師免許がないとできない、はっきりとしたルールのある技術です。

でも、最初からそう決まっていたわけではなく、資格がいらなかった時代に増えたトラブルの積み重ねの中で、少しずつ今の形になってきました。

美容師免許を取ったあと、ヘアの仕事を続けるか、まつ毛やネイルの道に進むか、というのも、今の美容業界ではごく自然な選択肢のひとつになっているのかもしれません。