「すみません、実は…家で染めちゃったことがあって」
カウンセリングで、申し訳なさそうにそう言われることがあります。
怒られると思って、なかなか言い出せなかったそうです。
でも先に結論をお伝えします。
美容師は、セルフカラーをしたこと自体を怒りたいわけではありません。
知りたいのは「怒るため」ではなく、今日の施術プランを決めるためです。
- 黒染め・白髪染めの履歴があると、ブリーチの抜け方がまったく変わる
- セルフカラーの履歴があると、色ムラが出る場所がだいたい予想できる
- 縮毛矯正やパーマの履歴があると、かけられる薬剤そのものが変わる
逆に、履歴が分からないまま薬剤を付けると、思っていたのと違う色になったり、最悪の場合は施術を途中で止めることになったりします。
この記事では、特に伝えてほしい施術履歴と、覚えていなくても大丈夫な伝え方を、現役美容師の立場から紹介します。
目次
髪の毛は「履歴の年輪」みたいなもの
なぜ、そんなに昔の施術まで聞くのか。
理由はシンプルで、髪の毛には過去の施術がそのまま残っているからです。
髪は1か月に約1cm伸びます。
ということは、
- 根元から5cmの部分は、ここ半年くらいの髪
- 毛先30cmの部分は、約2〜3年前に生えた髪
ということになります。
つまり毛先には、2〜3年前のカラーやパーマの履歴が残ったままになっているんです。
「1年前に染めたから、もう関係ないですよね?」
と聞かれることもありますが、その染めた部分が今の毛先に残っているなら、関係大アリです。
美容師がカウンセリングで履歴を聞くのは、その年輪を読み取る作業だと思ってください。
特に伝えてほしい施術履歴
黒染め・暗い白髪染め
一番伝えてほしいのがコレです。
黒染めや暗い白髪染めには、人工的な色素がたくさん入っています。
この色素は、髪本来の黒い色素(メラニン)と違って、ブリーチでも抜けにくい性質があります。
そのため、履歴を知らずにブリーチをすると、
- 緑っぽい、赤っぽい、オレンジなどの思わぬ色が出る
- 染めた部分だけ暗いまま残って、境目がくっきり出る
- 思った明るさまで持っていくのに、予定より何倍も時間がかかる
ということが起きます。
「もう色落ちしたから大丈夫」と見た目では思っても、色素自体は髪の中に残っていることが多いです。

※毛先に白髪染め(上)と黒染め(下)をしているところ

※そのあと全体をブリーチ(1時間放置)した後の毛束。毛先の白髪染め・黒染めをした部分が、黒っぽく残っています

※外で見るとこの状態。ブリーチを使っても、毛先の色が落ちていません
セルフカラー・セルフブリーチ
市販のカラー剤で染めた履歴も、立派な施術履歴です。
むしろセルフカラーは、
- 毎回全体に塗っていたのか、根元だけだったのか
- どの範囲まで薬が付いていたのか
が分かりにくい分、美容室のカラーよりも予想が難しくなります。
ブリーチをした後にムラになって出てくるのは、だいたいこの「塗っていた範囲の差」です。
使った商品名や色が分かればベストですが、分からなくても「市販の暗めの茶色で、全体に2回くらい」と教えてもらえるだけで十分助かります。
ブリーチ
美容室でブリーチをした履歴も伝えてください。
回数が1回なのか3回なのかで、今日かけられる薬剤の強さが変わります。
ブリーチ毛は見た目の色が戻っていても、髪の内部のダメージは戻っていません。
その状態で縮毛矯正やパーマをかけると、チリチリになったり、最悪切れてしまったりすることもあります。
縮毛矯正・パーマ
カラーとは関係なさそうに見えますが、縮毛矯正やパーマも薬剤で髪の結合を一度切っている施術です。
なので、
- ブリーチができるかどうか
- パーマがかかるかどうか
- どの薬剤なら安全か
の判断材料になります。
「だいぶ前だから」と省略されがちですが、毛先に残っているうちは現役の履歴です。
ヘナ・ヘアマニキュア・カラートリートメント
忘れられやすいのが、このあたりです。
「染めてはいないから」と思う方も多いのですが、ヘナやヘアマニキュア、カラートリートメントも、髪に色をつける施術です。
ヘアマニキュアとカラートリートメントは、髪の表面に色をのせるタイプです。
ヘナは、植物の色素が、髪の主成分である「タンパク質」にくっついて色がつくタイプです。
どれも髪に色が残るので、その後のカラーの色の入り方や、ブリーチの抜け方が変わることがあります。
白髪をぼかすために使っているカラートリートメントも、施術履歴に入れてくださいね。
言わないままだと、どうなるのか
「言ったら怒られそうだから、黙っていよう」
その気持ちは分かります。
でも、履歴は隠しても、薬剤を付けたときの反応で分かってしまうことが多いです。
実際に起きるのは、こういうことです。
- 予定していた色にならず、やり直しや追加の施術が必要になる
- 時間が足りなくなり、その日は希望のメニューまで終わらない
- 髪のダメージが想定以上で、施術を途中で止める判断になる
- 場合によっては、その日の施術自体をお断りすることもある
黙っていたことで一番損をするのは、実はお客様側なんです。
逆に、最初に教えてもらえれば、
- 今日できる範囲と、できない範囲
- 何回かに分けて目標の色に近づける計画
- ダメージを抑えるための薬剤の選び方
を最初から組み立てることができます。
全部覚えていなくて大丈夫です
「昔すぎて覚えていない」という方も大丈夫です。
正確な日付や商品名まで完璧に覚えている必要はありません。
伝えてほしいのは、この4つだけです。
- いつ頃か(半年前、1年前、など大体でOK)
- 何をしたか(黒染め、ブリーチ、縮毛矯正、など)
- どこまでしたか(全体、根元だけ、毛先だけ)
- 自宅か美容室か
例えば、こんな言い方で十分です。
「1年くらい前に、市販の黒染めを全体に1回しました。その後は美容室で普通のカラーだけです」
これだけで、美容師側の判断材料としてはかなり揃います。
商品の箱や、買ったときのスマホの購入履歴が残っていたら、それを見せてもらえるとさらに助かります。
できれば予約の時点で伝えてください
履歴は、当日のカウンセリングでももちろん大丈夫です。
でも、できれば予約の時点で伝えてもらうのが一番おススメです。
理由は、履歴によって必要な施術時間が変わるからです。
黒染めを落とす施術や、段階的に明るくする施術は、通常のカラーの予約枠では時間が足りないことがあります。
予約サイトの備考欄や、お店へのメッセージに一言書いておいてもらえるだけで、お店側も時間と薬剤を用意して待つことができますよ。
美容師は履歴をどうやって見ているのか
ちなみに、美容師は口で聞くだけで判断しているわけではありません。
乾いた髪の状態を見て、触って、こんなところをチェックしています。
- 根元と毛先で、色の抜け方や明るさに差がないか
- 毛先だけ極端に引っかかったり、濡らすとテロンと伸びる感じがないか
- 色落ちの仕方が、普通のカラーと黒染めでは違う出方をしていないか
それでも、見た目だけでは分からない履歴もあります。
特に黒染めは、色落ちして茶色く見えていても、人工色素だけが中に残っていることがあるんです。
だからこそ「見れば分かるでしょ」ではなく、言葉で教えてもらうのが一番確実です。
聞いた話と、見た髪の状態が一致したときに、初めて安心して薬剤を選ぶことができます。
伝えたら「今日はできない」と言われることもあります
正直に伝えた結果、「今日は希望の色まではできません」と言われてしまうこともあると思います。
ガッカリするかもしれませんが、それは意地悪で言っているわけではありません。
無理に進めて髪が切れてしまえば、元に戻すことはできません。
髪は、切れてしまったら生え変わるまで何年もかかります。
その代わり、美容師側はだいたい代替案を考えます。
- 今日はできる範囲の色にして、次回以降で段階的に明るくする
- 全体ではなく、ハイライトやバレイヤージュなど部分的な方法に変える
- 先にカットやケアで状態を整えてから、カラーは次回にする
「今日できない」は「ずっとできない」ではありません。
履歴を伝えてもらえたからこそ、その計画が立てられるんです。
まとめ
- 美容師が施術履歴を聞くのは、怒るためではなく、今日のプランを決めるため
- 髪は1か月に約1cm伸びるので、毛先には2〜3年前の履歴が残っている
- 特に伝えてほしいのは、黒染め・白髪染め、セルフカラー、ブリーチ、縮毛矯正・パーマ、ヘナやカラートリートメント
- 言わないまま進めると、色ムラや思わぬ色、施術の中断につながることがある
- 全部覚えていなくても大丈夫。「いつ頃・何を・どこまで・自宅か美容室か」の4つで十分
- できれば予約の時点で一言伝えておくと、時間も薬剤も用意できる
セルフカラーをしたことを、どうか申し訳なく思わないでください。
正直に伝えてもらった方が、美容師はよっぽど助かりますし、その髪でできる一番キレイな方法を一緒に考えられます。
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